海底通信ケーブルは、世界全体で総延長約120万キロ(=地球全周の約30倍)が敷設され、情報通信技術を支える重要なグローバル・インフラです。情報の自由な流通は、自由経済や民主主義には不可欠です。海底通信ケーブルは、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」地域の平和と発展に貢献する資産であり、その安全保障の優先度は極めて高いと考えられます。
海底通信ケーブルは自然災害や人為的な破壊行為によって損傷する危険性が高いインフラであるにも関わらず、その防護に関する法的・政治的な取り組みは十分とは言えません。特に日本は海底通信ケーブルへの依存度が高く、その損傷によっては経済・安全保障上の深刻な被害を受ける可能性があります。日本が海底通信ケーブルの安全確保に積極的に関与することは日本の国益を守るだけではなく、国際社会への貢献でもあります。
しかし、海底通信ケーブルの敷設範囲は広く、当然日本だけでは対応できません。世界最大の海底通信ケーブル保有者である米国や、FOIPの同志であるオーストラリアやインド、そして多数の重要な海底通信ケーブルが通過する領域を有するASEAN諸国などとの連携が不可欠です。そこで求められるのが「海洋ストラテジック・コミュニケーション」です。
「海洋ストラテジック・コミュニケーション」とは、海底通信ケーブルの重要性や脆弱性を国内外に啓発し、協力関係を築くための戦略的な情報発信活動です。今回のセミナーでは、元自衛官で2019年から「海洋ストラテジック・コミュニケーション」を提唱されている、大阪経済法科大学の矢野哲也教授を講師にお招きします。
本セミナーでは、日本の国防の現場から見た海底通信ケーブルの地政学的なリスク、保護の実態、法的問題、「海洋ストラテジック・コミュニケーション」による国際協調の可能性などについて伺い、日本が国家安全保障上の観点から今後どう行動すべきかについてのご提言をいただきます。
日本GIFのオンラインセミナーは、講師と参加者との質疑応答の時間を長めに取っております。日本や「開かれたインド太平洋」地域の安全保障、情報通信技術の安全確保、重要インフラを守るための国際協調等に関心をお持ちの方のご参加をお待ちしております。また、関係部署等に、情報を転送していただければ幸いです。
開催日時:2023年3月29日(水)14時~15時半
開催方式:Zoomを使用したウェビナー(オンラインセミナー)
☆事前のご登録を下記よりお願いいたします。
参加費:無料、どなたでもご参加いただけます。
(イベントは終了しました。)
※Zoomの仕様上、お名前を日本語で入力されると、ご登録確認メール記載の姓名が逆転いたします。ご容赦いただきますよう、よろしくお願いいたします。
矢野 哲也(やの てつや)氏プロフィール
1983年に防衛庁・自衛隊一般幹部候補生として陸上自衛隊に入隊後、空挺部隊などを経て師団司令部や方面総監部で法務官及び法務幕僚として勤務。その間、防衛庁派遣学生として大阪大学大学院国際公共政策研究科で修学、博士号を取得した後、防衛研究所所員としてNATO国防大学(イタリア・ローマ)統合パートナー・オリエンテーションコースを修了。自衛隊を定年退職後、2015年から大阪経済法科大学法学部教授として平和学などの教鞭をとるかたわら戦略的コミュニケーションに関する研究に従事。主な論文に「米国のストラテジック・コミュニケーション政策」(大阪大学『国際公共政策研究』2010年)、「海底通信ケーブル防護のための日本の海洋ストラテジック・コミュニケーション」(大阪経済法科大学『21世紀研究』2019年)があり、その他「ロシアの武力侵攻に対するウクライナのストラテジック・コミュニケーション」を『大阪経済法科大学法学論集』(3月下旬発刊予定)に寄稿。
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